龍泉寺の自然の豊かさ

龍泉寺の湿地の保護活動は、元高校教諭の藤原さんと教え子の故加藤さんを中心に2009年1月にボランティア活動としてスタートしました。龍泉寺の敷地内にある4箇所の湧水型湿地を復元し、再生し、保全してきました。 トキソウやサギソウの可憐さに見せられてスタートした湿地の保護活動でしたが、龍泉寺の自然の豊かさを再発見するにつけて、「岡山市内で、豊かな自然が残っていて、優先的に保全する価値のある地域」の思いを強くしています。

龍泉寺の自然と岡山市の生物多様性ホットスポット

龍泉寺の自然の豊かさをどのように表現すると分かり易いか考えてみました。「岡山市内で、豊かな自然が残っていて、優先的に保全する価値のある地域」の意味合いで「岡山市の生物多様性ホットスポット」をキャッチコピーとして使用することにしました。

生物多様性ホットスポットとは

環境省の環境白書(平成22年版)に“生物多様性ホットスポット”について、次のように書かれています。

「1988年(昭和63年)に保全生物学者のノーマン・マイヤーズが提唱した「生物多様性ホットスポット」という言葉は、その地域に維管束植物の固有種が1,500種以上生育し、高い生物多様性を有する一方で、自然植生が70%以上損なわれていて破壊の危機に瀕している地域を指します。世界で34の地域が指定されており、わが国もその一つに入っています。ホットスポットは、地球の表面積のわずか2.3%であり、人口が集中する地域を多く含むことから、開発の圧力が高いことがうかがえます。」

龍泉寺の自然が岡山市の生物多様性ホットスポットに値する根拠

龍泉寺の自然が岡山市の生物多様性ホットスポットに値する根拠を次の項目から解説します。

1.希少動植物が生息・自生している。

龍泉寺の敷地は約60ヘクタールあり、敷地内に希少動植物が生息・自生しています。希少植物は、移植されたものでなく伝来の自生種です。
①環境省の第4次レッドリストに掲載された種で、絶滅危惧Ⅱ類:5種(植物4、動物1)、準絶滅危惧7種(植物4、動物3)を確認(2016年2月現在)
②モウセンゴケ、ミミカキグサなどの食虫植物、ノハナショウブ、ヌマトラノオ、サワギキョウなどの希少植物が自生
③ハッチョウトンボ、オニヤンマ、チョウトンボなど28種のトンボを確認(2016年2月現在)

2021年10月現在:環境省レッドリスト2020基準の絶滅危惧1B類・絶滅危惧Ⅱ類・準絶滅危惧の合計で25種(植物9、動物16)を確認しています。トンボは45種を確認しています。

ヒメミクリ

トキソウ

サギソウ

ハッチョウトンボ

2.里山の自然が残されている。

里山の自然資源が活用されなくなったこと、人口減少や高齢化などで里山は荒廃してきています。龍泉寺の敷地は、山・池・田・畑などで構成されており、間伐や下草刈りが行われ、里山が維持されています。この里山の環境が、生物多様性を高くしています。

3.龍泉寺の湿地は風化花崗岩土壌の湧水型湿地である。

龍泉寺の湿地の上流に人家がなく生活用水の流れ込みがなく、湿地形成に必要な貧栄養の湧水が年中確保され、生物多様性に富んだ植生を形成している。

4.龍泉寺周辺は開発を免れたホットスポットである。

希少動植物の絶滅要因の第一は、開発です。龍王山周辺も例外でなく、1970年頃から1990年頃にかけて、ゴルフ場や岡山空港が造成され、宅地開発が進みました。花崗岩が風化してできた山土(まさ土)の採掘場や産業廃棄物処理場 が造られています。
龍王山が開発を免れたのは何故でしょうか。龍王山の南麓に最上稲荷山妙教寺、西中腹に最上本山御瀧龍泉寺、山頂に龍王山一乗寺があり、お寺が龍王山の地主であったことが、自然が守られてきた要因と考えています。一般の民間所有であれば、ゴルフ場造成ブームの時に、ゴルフ場の適地として開発されていた思われます。龍泉寺周辺は開発を免れたホットスポットです。

次世代に残したい龍泉寺の自然

次世代に豊かな自然を残していくには、湿地および周辺の保全作業を継続していく必要があります。龍泉寺の自然を守る会がスタートして、2017年1月で満8年になります。会員の高齢化が進み世代交代の時期を迎えています。活動の担い手となる後継者の確保と育成が、最重要課題になっています。
60歳代の若い方々が、龍泉寺の自然を守る会の保全活動に参加していただけることを期待しています。

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